ラジウム226と人形峠ウラン残土問題
昨夜の記事で,東京都世田谷区の民家の敷地から毎時約2μS/hの線量が検出されたと書きましたが,民家の床下から瓶が出てきたと聴き,またもや耳を疑いました。

原発由来の放射能を否定した「スピンコントロール(情報操作)」と思い込んだのです。しかし,夕べの「種まきジャーナル」の小出裕章さんのコメントで,世田谷区の汚染に関しましては少し胸をなで下ろすことが出来ました。




ラジウム226とは半減期が1600年という途方もない寿命を持った放射性核種ですが,このようなものが放置されて来たと言うことは,改めてこの国の放射線管理が杜撰であり,過去の経緯からしても放射性物質の扱われ方が軽んじられてきた証だとも言え,別の意味で驚きでした。
酸化チタンを精製するときにも放射性物質が出ることも…



微量の放射能はむしろ体にいいという,今日では「化石化」した学説,「ホルミシス効果」が盛んに「言説化」されて過去,「ラドン温泉は健康増進に良い」という言葉が流布していたことを思い出したのです。

実はこの事件が起きる前,私は小出さんが過去「ウラン残土問題」の講演会を鳥取県三朝町で行っていたことを知っていました。その堆積物からレンガを焼いて全国の個人ユーザにネット販売していたという事実もです。

下の動画はその動画です。







また,三朝町で行われた小出さんの講演会の模様を記録した,ウラン残土訴訟を支える会のwebサイトから引用をご紹介いたします。


= 講演会 =
『ウラン残土レンガと放射能の基礎知識』
講師 = 小出裕章(京大原子炉実験所助手)[講演会報告]

ラジウム温泉とウラン残土レンガの問題点を浮き彫りに
11/22 小出裕章さんの講演会から

2008年12月7日
ウラン残土市民会議
土井淑平
1、低線量の放射線も危険で「しきい値」はない
少し報告が遅れましたが、11月22日に鳥取県三朝町で行われたウラン残土市民会議主催の講演会『ウラン残土レンガと放射能の基礎知識』の概略をお伝えします。JR倉吉駅で講師の小出裕章さんを迎えた私たちは、三朝町の入り口の細長い空き地にあるレンガ加工品による歓迎塔の建設予定地を横目で見ながら、三朝町に入りました。
 周知のように、三朝町はラジウム温泉を観光看板にしている町だけに、さっそく三朝町の温泉旅館で手にした温泉旅館協同組合(http://www.tabijozu.ne.jp/)のチラシには、「身体の治癒力を高める三朝温泉の「放射線ホルミシス効果」」の大見出しで、「三朝温泉は世界有数のラドン温泉」「微量なラドンの放射線が細胞などを活性化します。これがホルミシス効果です」などといった言葉が目に飛び込んできました。
 三朝町のブランナールみささで行われた講演会には、一般町民のほか複数の町議や区長も含めて約40人が参加。小出さんは19世紀末にラジウムを発見したキュリー夫人が白血病で死んだ事実に触れながら、放射線の発見が同時に被曝の歴史でもあったことを指摘し、1999年の茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO)の被曝者の悲惨な状況に寄せて、放射線のエネルギーがいかに巨大であるかを分かりやすく説明しました。
 低線量の放射線の影響について、小出さんは米国科学アカデミーの委員会による「被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。最小限の被曝であっても、人類に対して危険を及ぼす可能性がある」との見解を引用。こうした放射線の影響は線量に比例するとの考え方を「直線・しきい値なし」(LNT)仮説と呼ぶが、これ以下の線量なら被曝の影響はないという「しきい値」説については、国際放射線防護委員会(ICRP)も「生体防禦機構は、低線量においてさえ、完全には効果的でないようなので、線量反応関係にしきい値を生じることはありそうにない」と述べて、いわゆる「しきい値」説を否定していることを明らかにしました(小出レジュメの図2参照: ← ここをクリック)。

2、ラジウム温泉・ラドン温泉は健康にいいのか?
もとより、ラジウム温泉・ラドン温泉で喧伝される放射線のホルミシス効果について、小出さんが科学的な見地から「残念ながらそんなことは決してありません」ときっぱり否定したことは、言うまでもありません。三朝町は毎年キュリー夫人祭をやっているが、ラドンを吸い込むと体にいいと考えて、温泉客に温泉水を飲ませるのは問題だとも指摘しました。
小出さんによると、地殻や宇宙線などからの天然のラドンは避けようがないが、ラドンによる被曝を可能な限り避けるため室内ラドン濃度を規制しているのが世界の趨勢で、たとえば日本でも法令で管理区域の空気中のラドン濃度を300ベクレル/立法メートルを超えてはならないと定めています(小出レジュメの表4参照 ← ここをクリック)。
三朝温泉の浴室の空気中のラドン濃度は200~7700ベクレル/立法メートルで、高いものは放射線業務従事者が立ち入る場所の規制値3000ベクレル/立法メートルをさえ超えています(小出レジュメの表5参照 ← ここをクリック)。ラジウム温泉・ラドン温泉は健康にいいとの宣伝がなされていますが、小出さんは「私はそんなことは決して言ってはいけないと思う。放射線の長い被曝のデータはそれを否定している」と述べました。
これに関連して小出さんは、「私はラジウム温泉を売り物にするのは間違いだと思う。三朝温泉はとてもいい温泉で私も好きだが、ただラジウムがいいということをうたい文句にするのはやめた方がいい。ラジウムを売り物にすればいずれ三朝の首をしめる。温泉そのものを看板に掲げることをやられた方がいいだろう。たしかに温泉は健康にいいし、健康に役立っている。ただそれはラジウム・ラドンのためではない」と付け加えました。
それではラジウム・ラドンの出る温泉はどうすればいいのか。小出さんは会場からの質問に答えて、ホルミシス効果などと称して客にラドンを吸わせるのではなく、浴室の換気をよくしてラドンを逃がすことを勧めました。「ラジウム・ラドンが健康にいいとして、それを売り物にするのは無知ゆえの愚かな行為」というのが、科学者としての小出さんの論点なのでした。

3、ウラン残土の「公害輸出」とレンガ加工の問題点
人形峠周辺で採掘されたウランは100万キロワットの原発の5カ月分くらいの燃料に相当する量でしかありませんでしたが、それでもドラム缶100万本に相当する約20万立方メートル(人形峠の露天掘りの夜次鉱山のウラン残土を含めるとドラム缶225万本分に相当する45万立方メートル)のウラン残土を出して、現場に野積みで放置したままでした。
このうち、鳥取県湯梨浜町(旧東郷町)方面地区のウラン残土は1万6000立方メートルでしたが、日本原子力研究開発機構(旧動燃)は方面自治会に協定書で撤去を約束した3000立方メートルのうち、ウラン濃度の高い旧貯鉱場跡の290立方メートルのウラン残土を、もともと先住民の土地である米国ユタ州のホワイトメサの製錬会社に製錬のためと称して搬出しました。
小出さんによると、290立法メートルの残土のウランは150キログラムにしかならず、これを売ってもたかだか100万円なのに、原子力機構は6億6000万円もかけてホワイトメサに搬出した、と指摘。これは「商取引」ではなく、自分で始末のできないごみを他者に押し付ける「公害輸出」である、と批判しました。それまでウラン残土は「安全です」「安全です」と言っていながら、なぜアメリカ先住民の所に持って行ったのか、安全なら自分の所で使えばいいではないか、その矛盾が暴露された瞬間でもありました。
原子力機構は撤去を約束したウラン残土のうち、残りの約2700立法メートルを人形峠県境の三朝町地内の鳥取県有地に搬出し、ここでレンガに加工する作業を始めています。2006年5月に原子力機構・鳥取県・三朝町・文部科学省の4者でレンガ加工の協定書を結んだ当時、原子力機構は記者会見や作業説明書のなかでレンガ加工品は鳥取県外に搬出し、全国約10カ所の原子力機構の事業所で歩道の舗装などに使うと明言していました。
そこへ降ってわいたように出てきたのが、レンガ加工品100万個のうちの2万個を三朝町の公共施設に受け入れるという話です。小出さんは講演で「レンガを引き受けるということは、放射線被曝の危険も引き受けるということで、動燃(原子力機構)に責任逃れをさせる。彼らは自分たちの事業所で使うと言っていたではないか。いい加減な解決に手を貸す行為はやめてもらいたい」と指摘しました。
小出さんは講演で配布したレジュメでも、「ありもしないホルミシス効果の研究などを理由に、三朝町がレンガを引き受けてしまえば、「発生者責任」を逃れる手助けをすることになる」と強調しています。
 レンガ加工場は2008年4月から稼動を始めていますが、鳥取県放射能調査専門家会議に提出された空気中のラドン濃度の測定値を見ると、レンガ加工場の稼動により以前には検出されなかった濃度のラドンが検出されるようになっているとして、それを小出さんは図表化して示しました(小出レジュメの図9参照 ← ここをクリック)。

4、発生者に責任を取らせ契約を遵守させること
 三朝町でラジウム温泉やウラン残土にかかわる講演会が開かれるのは初めてです。それだけに、放射能の基礎知識から説き起こして、ラジウム温泉やウラン残土の真実に迫る小出さんの講演は、ラジウム温泉やラドン温泉はいいものだとの考えをばくぜんと持っていた聴衆にとっては、一種の衝撃を与える内容でもありました。
 小出さんの講演のあとの質疑応答では、町議の1人から「三朝はラジウム温泉ということで30数年前からめきめき伸びてきた温泉地だ。レンガについても個人的には反対である。町民に相談なく決めたことで私は遺憾だ。放射能は目に見えない物質、健康ということを考えて、町民に聞いてからやるべきではないか。ラドン温泉が非常にいいというのが間違いだと分かった。町民に賛同いただける行政をしなければならない」との発言がありました。
 別の町議の1人も「無知ほど恐ろしいものはない。ラジウムは体にいいからと、毎日温泉に入り、温泉水も飲んでいる。ラジウムはホルミシス効果で、健康にいいと言われてきた。それではどう三朝を売り出したらいいか。どう三朝の活性化につなげたらいいか。何のためにキュリー祭をしているのか。岡山大学の研究で三朝はガンの発生率が低いという話も聞いているが、これはどうなのか」とのジレンマを率直に表明しました。その岡山大学のデータについて、小出さんはつぎのように解説しました。
 「岡山大学温泉研究所のデータで統計学的に三朝のガン発生率が少ないとはいえず、このデータは科学的には意味がないと否定されている。疫学という学問で証明するにはものすごく長い時間がかかる。米軍は10何万人の被曝者を抱え、被曝量に分けて長年調べ続けて、被曝の影響がようやく分かってきた。現在、生物学的、生物物理学的な知識を総合して考えると、被曝する限り危険はある。三朝もラジウムを売るのではなく、温泉そのものを売るべきだ。レンガ加工品で記念塔をつくるのは愚かである。レンガ加工品が安全だというなら、動燃(原子力機構)の本社なり事業所に持って行けばいい。彼らが危険だと分かっているから、自分たちが始末をつけられないものをどこかに押し付けようとしているのだ。三朝町が象徴的に引き受けるのはやめてほしい」と。
 すでに岐阜や北海道など各地の自治体はレンガの受け入れを拒否している。小出さんはレジュメの最後で「原子力機構の職員4400人の1人1人が200個ずつレンガを所持すればいい。庭のある人はレンガのテラスをつくればいいし、マンション住まいであればベランダに小ぶりの花壇でも作ればいい」との考えを明らかにしています。
これは私たちが方面地区のウラン残土撤去運動でも強調してやまなかった発生者責任、並びに、法治国家における契約遵守の思想に即した1つの解決方法といえます。いずれにせよ、小出さんの講演は放射能の基礎知識から当面する現実の難題までをテーマに、私たちに科学によって解明された事実から目をそむけず、道義的にも道を踏み外さない解決を探らねばならないことを教える、まことに貴重な講演でした。くわしくは小出さんのレジュメ(pdfファイル)も併せて参照していただけたら幸いです。




pdfリンク先

http://uranzando.jpn.org/uranzando/shimin/resume081115.pdf
[PR]
by rosso_fiolencino | 2011-10-14 22:57 | 反原発
<< ウラジーミル・バベンコさんの講... 堆積物6万3000ベクレル検出... >>