国民保護法・福井県美浜原発で初の訓練
昨年の通常国会で'04年6月に成立し、同年9月から施行された「国民保護法」をご存知でしょうか?「国民保護法」とは、端的に言えば「武力攻撃」や「テロ攻撃」を想定して作成されたものです。もう少し、詳しく解説しますと「有事」の際に国民の生命財産を守り、国や自治体の権限・役割を定めた法律で、避難時の土地・家屋の使用などが盛り込まれ、その私権制限に踏み込んだ内容となっています。政府は今年三月、同法の運用マニュアルである基本方針を閣議決定しています。



さて、27日その「国民保護法」に則って福井県美浜原発周辺で、政府と福井県が主催しテロ攻撃を想定とした、初の訓練が実施されました。自治体・警察・自衛隊の他、電力会社、地元放送局など140機関計約1300人を動員し、地元住民も避難訓練に加わりました。

過去、原発事故を想定とした訓練は、各自治体で実施され、やはり大規模な訓練で原発周辺の住民の「不安」を象徴した出来事して実施されていましたが、それはあくまでも「原発事故」という、不慮の事故による「放射能汚染」の回避をするための「訓練」であったはずです。

しかしながら、今回の訓練はそれまでの原発事故を想定とした「訓練」とは性格も似て非なる、「テロ攻撃」を想定とした「訓練」であり、これに伴って、国家によるありとあらゆる「規制」が可能になったという事実です。つまり、同法が一部の私権制限や、放送局に避難指示の放送を義務付けるという、「メディア規制」が平然とやって行われるということも可能でしょうし、病院等の「医療機関」や避難所の「学校など施設」或いは、個人の邸宅に及んでいます。

さて、

内閣官房国民保護ポータルサイトを閲覧しますとなんともお粗末な、マニュアルがPDF形式で
配布されています。



このマニュアルを見ていくと、如何に政府が行き当たりばったりの「有事政策」であるということもですが、何よりも「日本はとうとう、戦争でも起こす気なのか?」と、その真意を図りかねます。

具体的に見ていくと、個人的にはこれは「自然災害」が起こった時の避難マニュアルがモデルになっているようにも感じられます。

例えば、「武力攻撃やテロがなどが迫りまたは発生した地域において警報が発令された場合に直ちにとっていただきたい行動」の欄を見ると。

1 屋内にいる場合
・ドアや窓を全部閉めましょう。
・ガス、水道、換気扇を止めましょう。
・ドア、壁、窓ガラスから離れて座りましょう。

2 屋外にいる場合
・近隣の堅牢な建物や地下街など屋内に避難しましょう。
・自家用車などを運転している方は、出来る限り道路外の場所に車両を止めてください。やむを得ず道路のおいて避難するときは、道路の左側端に沿ってキーをつけたまま駐車するなど緊急車両の通行の妨害とならないようにしてください。


或いは、「避難の指示が出されたら」の項目を見ると
行政機関からの避難指示としては、屋内への避難、近隣の避難所施設への避難、市町村や都道府県の区域を越えた遠方への避難などが考えられます。(中略)

避難の指示に基づき、自宅から避難所へ避難する場合には、以下のことに留意しましょう。
 
・元栓を締め、コンセントを抜いておきましょう。冷蔵庫のコンセントは挿したままにしておきましょう。
・頑丈な靴、長ズボン、長袖シャツ、帽子などを着用し、非常持ち出し品を持参しましょう。
・パスポートや運転免許証など、身分を証明できるものを携行しましょう。
・家の戸締りをしょましょう。
・近所の人に声をかけましょう。
・避難の経路や手段について行政機関からの指示に従い、適切に避難しましょう。


どうですか?地震等や台風等の災害避難マニュアルと、類似していませんでしょうか?

さらに、このマニュアルは一体「テロ」を想定したのか「有事=戦争」を想定したものなのか、皆目検討がつかないということです。

こんな記述があります。

 
ゲリラや特殊部隊による攻撃の場合
1 特徴
・突発的に被害が発生することも考えられます。
・被害は比較的狭い範囲に限定されるのが一般的ですが、攻撃目標となる施設(原子力事業所などの生活関連等施設など)の種類によっては、被害が拡大する恐れがあります。
・核・生物・化学兵器や、放射能物質を散布することにより放射能汚染を引き起こすことを意図した爆弾(ダーティーボム)が使用されることも予想されます。
 
2 留意点
・突発的に被害が発生することも考えられるため、攻撃当初は一旦屋内に避難し、その後状況に応じ行政機関からの指示に従い適切に避難しましょう。


ここまでが、「テロ想定」ですが、このマニュアルは、飛躍して「弾道ミサイルによる攻撃の場合」という項目にはこのような記述が見られます。
 
  
1 特徴
・発射前に着弾地域を特定することが極めて困難であり、短期間での着弾が予想されます。このため、まず弾道ミサイルの発射が差し迫っているとの警報が発令され、テレビやラジオなどを通じてその内容が伝えられます。その後実際に弾道ミサイルが発射されたときはその都度警報が発令され、着弾が予想される地域には、サイレンなどにより注意を呼びかけることとしています。(2の項目は略)

2 留意点
・攻撃当初は屋内へ避難し、その後状況に応じ行政機関からの指示に従い適切に避難しましょう。屋内への非難に当たっては、近隣の堅牢な建物や地下街などに避難しましょう。


その後は、「陸上侵攻の場合」「航空攻撃の場合」「武力攻撃やテロなどの手段として化学剤、生物剤、核物質が用いられた場合」等々が続きますが、ここで考えて欲しいのは、テロと戦争の本質は私個人は別物だと、解釈します。

テロは、個人か特定の少数の集団によって実行される「攻撃」であり、その背景には必ず「個人・少数の政治的」な意図があるということです。(日本国内でのテロはむしろ、犯罪的な要素が濃く、政治的な意図や背景は、今のところ垣間見えないと思われます)

しかしながら、有事=戦争というものは、これはあくまでも「国家間の交戦」であり、国家が総力を挙げて相手国を攻撃するという、本質の違いを履き違えているという点にあります。もちろん、戦争も政治上の延長線上にありますが、その規模は、テロとは比較になりません。また、先制攻撃などの一切の交戦権を日本国憲法9条は否定しています。

この「国民保護法」のマニュアルはいかにも「無能な官僚」が作成した「通知文」に過ぎないという例をさらに、列挙すると。

 
核爆発の場合
・閃光や火球が発生した場合には、失明する恐れがあるので見ないで下さい。
・とっさに遮蔽物の陰に身を隠しましょう。近隣に建物があればその中へ避難しましょう。地下施設やコンクリート建物であればより安全です。
・上着を頭からかぶり、口と花をハンカチで覆うなどにより、皮膚の露出をなるべく少なくしながら、爆発地点からなるべく少なくしながら、爆発地点からなるべく遠く離れましょう。その際、風下を避けて風向きとなるべく垂直方向に避難しましょう。
・屋内では、窓閉め・目張りにより室内を密閉し、出来るだけ窓のない中央の部屋に移動しましょう。
・屋内から屋内に戻ってきた場合は、汚染物を身体から取り除くため、衣服を脱いでビニール袋や容器に密栓しましょう。その後、水と石けんで手、顔、体をよく洗いましょう。 
・安全が確認できるまでは、汚染された疑いのある水や食物の摂取は避けましょう。
  (以下略)


以上を見てお分かりの通り、このマニュアルは「現実乖離」の何ものでもないと考えます。「広島」「長崎」における「原爆資料館」を訪れることがある方なら、ちょっと想像を働かせれば、このような「マニュアル」で国民を守ることは、到底不可能に近いと思うことでしょう。何故ならば、核攻撃の場合を想定するならば、爆心地からかなり遠方でないと、意味がありませんし、爆心地から数キロ単位の範囲であれば、とっさに身を隠したり、避難したり閃光を見ないようにする、窓ガラスから離れるということは出来ないことは、簡単に分かりきったことです。

このような、マニュアルを国民が真剣に受け止めるとは私個人は、そう思いません。

では、もし武力攻撃された場合、どうすればいいのか?という疑問も出ることでしょう。百歩譲って、有事想定なら過去の「冷戦」における東欧諸国やアメリカの核シェルターの実態を思い出して欲しいのです。

本気で、政府は「有事=戦争」を想定するのなら、巨額な費用を投じて「核シェルター」の建設を各自治体に建設し、少なくとも一週間以上の「水」「食料」「医薬品」「衣類」「最低限の娯楽」を備えるべきでしょうが、これも赤字国家予算で無理なことは、想像に堅くないでしょう。

それよりも、重要なことは「国民保護法」より、近隣諸国との「平和外交努力」こそが鍵でしょう。過去、防衛庁が予測していた1998年8月における北朝鮮の「テポドンミサイル」の脅威が有事法制整備へ加速化した経緯があります。では、そのミサイルを発射させないために、中国等の近隣諸国への働きかけと友好関係こそ、結果的には国民を守るのであり、このような「国民保護法」やそのお粗末なマニュアルでは決して国民を守ることはできないのです。

(補足しますと、中距離ミサイルは『パトリオット迎撃ミサイル』や『最新イージス艦』で対処できますが、100%確実に迎撃できるかどうかは、あの『イラク戦争』のハイテク兵器の命中精度が、信頼に値しないないことでも、証明されていますし、大陸弾道ミサイルになるとかなり困難です。実際、『パトリオット』も『イージス艦』も、大陸弾道ミサイルを迎撃する能力は、あまり期待できないのです)

さて、いつの記事であったのか失念しましたが、この「国民保護法」は各地方自治体で、対策を採っているのはほとんどなく、「ジュネーブ条約」で自己の都市を守ろうという、動きもあります。

この「国民保護法」は、もし有事の際には自発的な「協力」を要請されるとありますが、実際は、全て、国家が国民へありとあらゆることを「強制」するということだけは念頭に入れ、「憲法9条」の理念と相反する「法」であるということを強く認識しなければなりません。

PDF形式による「国民保護法」マニュアル



追記:ちなみにこの「内閣官房国民保護ポータルサイト」は非常用のサイレン音まで聞けますが、実際に各自治体でどれだけの、防災用のスピーカーが準備されていますでしょうか?
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by rosso_fiolencino | 2005-11-28 22:23 | 政治・時事
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